中国情勢を考える
2021/10/13記
 東京オリンピックの閉会式(8月8日)から66日、パラリンピックの閉会式(8月24日)から50日が経過した。北京冬季オリンピックの開会式は来年2月4日なので今日から114日後に迫っている。
 東京であれば木更津からアクアラインバスで約1時間、北京であれば木更津からバスで40分の羽田から更に飛行機で約3時間で行ける都市での開催である。私が生まれて8ヶ月後の東京五輪には行けてないし、これまでの札幌・ソウル・長野・北京も会場に行けなかったので今回こそは現場に行こうと感染症が出る前には考えていたのだが、双方とも無観客での開催となり、今回も生でオリンピックを観戦することが出来ず終わりそうである。
 
 13年前に北京で開催された夏のオリンピックは中国の国力が充実してきたことを世界に示す場となったし、私も開催前に北京を見て勢いを感じてきた。しかしながらオリンピックの開催という世界が注目する場でチベットの窮状を訴える行為に対する中国政府の弾圧が明かとなり、聖火リレーでは世界中で人権抑圧に抗議する活動が行われた。日本でも長野市の善光寺の門前が抗議を妨害する中国人に占拠され、異様な風景となった記憶がある。
 
 それ以来、中国の人権問題はチベットに代表されると思っていたのだが、最近は欧米を中心にウイグルに対する批判が高まっているので私も知識をアップデイトするためPHP新書の「ウイグル人に何が起きているのか」を読んで衝撃を受けた。伝聞によるものも有り全てが真実ではないと思うが、中国政府が現地での取材制限を強めている状況なので真実は解らず、今世紀最悪の植民地政策が実施されていることは明かであろう。
 
 世界が批判する背景には、単に哀れなウイグル人を守ろうという意識だけでなく、経済力を増すなかで国際秩序を無視して横暴に振る舞う中国が許せないと言う現在の覇権国であるアメリカの意向や、産業スパイや企業買収により基幹産業に不安を抱える欧州という立場もあるだろう。さらにはアメリカのアフガン撤退でイスラムとの対立が弱まりイスラム教徒であるウイグル人をテロリスト扱いする中国を批判しても自らが批判されにくくなったという欧米の姿勢が変更されたことも影響しているだろう。
 それでも香港で自由な言論を弾圧している姿勢は改めさせ台湾を武力統一する夢を見せては成らないという意識は共有されたようで、ついにはフランスやイギリスのような欧州の国々が太平洋地域に海軍を派遣し、インド洋では自衛隊がドイツ海軍やオーストリア海軍と共同訓練を行って中国を牽制する事態となってきた。
 
 香港とマカオについては返還後である2013年に状況を見に行ったが一国二制度はそれなりに機能しているように思ったし、翌年秋に発生した雨傘運動を見ると香港における行動結社の自由は日本以上かと思ったものである。しかしその後に制定された国家安全法が恣意的に運用されることにより、民主派の政治家やマスコミの逮捕者が続き、外国人でも法に反したと言われると民主的な裁判を経ることが無く拘束される危険性が高くなっているのだ。
 世界に向けて一国二制度が崩壊したことを表明する中で台湾との統一を唱え始めている考え方が理解できない。香港人の苦痛を見た台湾人が大陸との統合を拒否することは明かで、大陸に親和的である国民党でも統一を言うことが難しくなっているだろう。
 
 香港にはまだ海外メディアの目が多いので強引な運用は控えられている方であるが、ウイグルで起きているような事態が香港で起きると、多くの香港人が収監されると予想する。
 強行と思われたトランプ大統領から民主党のバイデン大統領に代わっても中国との対立姿勢は強くなり、タカ派と言われる安倍総理からハト波の岸田総理に代わっても日本の姿勢は軟化していないように感じる。これは習主席が威圧することで現況を打破しようとする市政に対する裏返しの事態だと感じている。
 現在の事態は間違っており世界と調和することが反映に繋がると中国の知識層は気付いているだろうが、現在の皇帝として君臨する習主席と共産党に逆らうことは、党が国に優先する体制の中では異論を唱えることも出来ないのだろう。
 
 島嶼奪還のためという目的で購入が進むオスプレイを含む自衛隊の戦力、並びにインド太平洋での安定を目指す欧米の海軍の力で中国が暴発せずに推移し、拡大路線を捨てて再び協調姿勢に戻ることを願う。たとえ戦争に進まなくても言論の自由や少数民族に対する迫害が続くことで日本への亡命者が増えた場合、どの様に対処するべきなのか、今回の岸田政権にはシュミレーションを進めて貰いたい。
 
 昨年で姉妹締結50年をむかえた木更津青年会議所と花蓮青年商会はコロナで式典は疎か人的交流も出来なかったが、基本的な友人関係は続いている。多くの顔見知りが花蓮にいる中で先日のホテルの倒壊や特急列車事故の情報にも心配が募る。まして戦闘機の駐留する花蓮空港を要する友人の街が、この中国情勢の緊張感の中で無事であることを願う。
 更には台湾や香港という独立した政府を持つ地域が増え、チベットやウイグル、内モンゴルなどの少数民族の文化と歴史が尊重されて自決権をもち、それぞれが対等な関係で成長する欧州のような関係に何時かはなることを夢に見ながら、最近の中国情勢に関する思いをまとめたい。
 
 参考 ウィキペディアより引用

東トルキスタン共和国
1944年〜1950年

チベット国
1912年〜1951年