災ボラ総会に行く
2025/05/23記
 7年前に災害研修に参加し、災害ボランティア議員連盟の一員として活動する中で気が付いたら千葉県支部の副会長を務めるようになった。21日は千葉県支部の総会を浦安市役所で開催するので電車に乗って齋藤秀樹議員とともに浦安市まで出かけた。
 
 災害ボランティア議員連盟は平成21年(2009年)10月17日に設立総会を開催した、今年で16年目を迎える組織である。全国組織なので我々は「本部」と呼称している。本部には国会議員から町村議会の議員まで全国に多くの会員がいるのではあるが千葉県支部のように支部としての活動が活発なところは少ないようだ。
 
 千葉県支部は平成30年(2018年)8月20日と21日に習志野市と旭市を会場として開催された本部の研修の場で県支部の設立が話題となり、翌年の令和元年6月1日に木更津市で設立総会を開催し、国崎信江さんの記念講演を行ったことを皮切りに、下表のように毎年の総会と多くの研修会を開催している。
 
年度 総会 研修会
2019 R01 6月01日 木更津市
2020 R02 10月17日 富津市 10月18日 富津市
2021 R03 10月05日 佐倉市
2022 R04 11月26日 木更津市 11月27日 木更津市
2023 R05 8月23日 千葉市
2024 R06 6月25日 白井市 1月22日 鋸南町
2025 R07 5月21日 浦安市
 
 2022年にも木更津市で1泊2日の総会と研修会を開催しているが、研修の内容は「令和元年台風における館山市議会の対応」として私と同期で令和元年台風対策に当たった石井信重元議長に講演をいただいたので会場は木更津市でも内容は館山市である。
 
 今回は会員でもある浦安市の宝前議長に会場や講師の手配をしていただいた上に当日の司会進行まで担っていただき、浦安市役所9階第一委員会室で13時20分より総会を開催し、その後に2本の研修を実施したので報告する。
 
 支部総会には12市から14人の会員が出席し、他にも委任状での7人を含め現在の会員28人に対し21人の出席のもとで開催された。会場には浦安市議会の柳議長が挨拶に来ていただいた。
 議事は高木顧問が議長を務め、令和6年度事業報告及び決算報告、令和7年度事業計画及び会計予算が承認された。本年度の研修は夏頃に能登で支援活動を長期に渡り続けた本部の川上副会長(岐阜県議会議員)を講師に招き能登の状況や活動の課題などを聞くほか、年が変わる頃に旭市で東日本大震災からの復興と課題を学ぶことが決められた。
 最後に規約上は役員の任期が1年となっているため役員を下記の通り提案し承認を受けた。なお、前年度から役員の改変は無く、規約を見直して2年に一度でも良いのではと思うが、それは翌年度以上に検討することとする。
 
役職 氏名 備考
会長(支部長) 清水 大輔 前習志野市議会議員
副会長 泉川 洋二 鎌ヶ谷市議会議員
副会長 近藤 忍 木更津市議会議員
事務局長 稲葉 健 印西市議会議員
事務局次長 宝 新 浦安市議会議員
会計 徳永 由美子 佐倉市議会議員
会計 加藤 亮二 印西市議会議員
監事/監査 平田 新子 白井市議会議員
監事/監査 石井 敏宏 館山市議会議員
顧問 高木 一彦 元富津市議会議員
 
 上記の10名以外の会員は全て理事に就任していただくという案件も賛同された。従って理事会と総会は現状では同じ扱いであるが会員数が50人を超える規模に成ったころには事業規模も大きくなるだろうからスムーズな運営を行うために理事と会員の区分を設けることが必要になるのかもしれないと個人的には考えている。
 総会は40分で終了し14:10より研修が開始される。
 
1.『浦安市における市街地液状化対策事業』

 説明は危機管理課の職員3人と実際の事業を担当した道路整備課の職員2人で対応していただいた。
 浦安市は1962年以前は山本周五郎が「青べか物語」として発表したような漁師町で面積も2.62kuに過ぎなかった。高度経済成長に伴う産業用地を供給するため1965年から1975年にかけて現在のディズニーランドが立地するエリアなどを埋め立てた「中町」エリア8.72kuが形成される。さらに東京の住宅事情に応えるために1972年から1980年にかけて「新町」エリア5.63kuが形成される。なお、浦安市を含む東西線の東陽町から西船橋間が開業するのは1969年3月29日であり、浦安市内の京葉線が開業するのは1988年12月1日である。
 2011年3月11日に発生した東日本大震災は浦安市の最大震度5強で長時間の揺れが続いたことで市面積の86%で液状化現象を発生させ、「中町」と「新町」エリアでは下水道は壊滅し、地盤も50cm程度沈下した。市内の道路も220km中80kmが被災した。
 家屋被害も甚大で液状化の被害棟数26,914のうち浦安市だけで8,700棟を占めるなど全国の1/3が浦安市に集中した。被害を繰り返さないために対策が求められ、工法検討に1年半、事業計画や合意形成に4年、工事実施に2年半という8年間に渡る時間を掛け「世界初の試み」への挑戦が行われた。工法検討は土木・建築・地盤工学の3学会から成る15名の技術者が検討し「格子状地盤改良工法」が最適であるという結論に至った。事業計画の裏付けとしては国により復興特別区域に指定され交付金の担保がされたが、宅地部分の事業費のうち1/2は国が負担し、100万円を限度に市が1/4をは市が補助するという枠組みで事業が決まり住民説明会が開始された。工法の制約で原則として道路に囲まれた全ての宅地で対策を実施する必要があり、全ての住民の同意が得られないと事業化を諦めるという全会一致主義で進められた。
 国の負担や市の補助が有っても住民は200万円程度の負担が前提となるため各地で合意形成が出来ず、合意が成されて事業に着手した場所でも地下の状況が想定と違ったために追加負担が必要になると想定された段階で事業を取り下げるなど、下表のような実施状況で事業は終了となった。
 
段階 項目 地区数 宅地数 比率
説明会及び勉強会 検討対象想定 - 8,930 100.0%
事業への申し入れ 対象地区 16 4,103 45.9%
事業計画の決定 工事実施地区 3 471 5.3%
事業完了 工事完了 1 33 0.4%
 
 説明会は自治会別に合計20回、勉強会は173回開催した結果、想定の半数以上が事業へ申し入れを行わず、計画案の住民説明会を170回開始し、市が戸別訪問を行うなど意向を確認し設計の再検討などを行ったものの実際に事業化を始めたところは3地区だけで、そのうちの2地区は着手後に事業内容の変更が必要になった段階で全額公費負担で事業を取りやめるに至っている。
 浦安市議会の中でも多くの人材と時間を投入して33宅地の完成だけで事業が終わったことに多くの意見が出されたと聞く。なお令和元年度末までの市街地液状化対策事業費の総額は約58億円、復旧復興に要した総事業費は700億円に達した。
 マンションの建て替えは4/5の同意で、区画整理事業は2/3の同意で進められることに対して「世界初の試み」に対する根拠法が無いため事業は全会一致となり、一人の反対で全てが停まってしまう。私もこの状態を想定して事前に法制を整備する必要が有ったように感じたが当事者はそれどころではなかったのであろう。
 質疑の中で埋め立て地の中でも被害に差が出た理由を聞くと、埋め立ては海底の浚渫砂で行われ均一ではなかったことと、明らかに危険だと想定された区域には対策を講じていたので大丈夫だと思ったところが大きな被害を受けた事が解った。住民から造成者に対する裁判なども行われたようだ。震災は旧市街と埋め立て地で明暗を分け、震災の当日にも関わらず旧市街では災害が殆ど生じていないので何事もなかったように飲んでいる人も居たようである。これは令和元年台風の時に木更津市内でも温度差が有ったから何となく理解できる話である。時間が押しているが少しの休憩を挟み次の研修が開始された。
 
2.『浦安市災害ボランティアセンター』
 東日本大震災の翌日である3月12日から4月15日まで35日間に渡り浦安市災害ボランティアセンター(以下「VC」と記す)は開設され、延べ8,629人のボランティアを受け入れ989件の活動を実施した。令和元年台風での木更津市の実績に比べに約2倍の日数で約3倍の活動を行い約10倍の人数を受け入れていると考えると大変さは理解できるが震災翌週の土日に毎日1200人を超えるボランティアが集まってしまった時の対応は想像を絶するカオスであっただろう。開設した直後にはスコップや土嚢袋などの機材もなかったが市川市社協や浦安青年会議所などの支援で乗り越えたようである。その様な苦労を重ねてきたから令和元年台風には木更津市災害VCへ人材を派遣していただけたのだと感謝する。
 苦労を重ねてVCはどうあるべきかと議論を重ねた結果、機能を一層強化するため次の3点を目指す方向性に掲げている。
@システムを融合させたセンター運営
 昨年度、社協が独自に導入したコンサイド社製の「Joy Links」でボランティアの登録、受付、資材管理等を効率的に管理する(県内では千葉市・館山市・八千代市も導入済み)。これはボランティアも携帯にアプリを入れ自らの情報を呼び出せるQRコードを社協が読み込むことで名簿の記載や活動先の確認などの情報が削減できるものであり、導入数が多くなると活動のスタンダードに成りそうであると話を聞きていて感じた。
A市民協働型センターの導入
 市民にVCの運営に関わって目的に運営ボランティアを育成し訓練にも参加していただき体制づくりを目指す。これは木更津市でも防災コーディネーターの育成を行っているから同じような構造化と思うが、年間の活動は浦安市の方が濃厚であるように感じた。
Bコミュニティマッチング体制整備
 市民の力を活かしたニーズ把握を目指し、自治会や民生児童委員などの協力を得られる体制づくりを目指す。これは鋸南で学んだ最後の一人まで支援するという考えにつながる。令和元年台風では支援を求めてはいないが支援が必要な全ての市民に寄り添えていたのかと考えると、この課題は重い。
 質疑の中で重機を使用するような技術系ボランティアとの連携などが今後の課題であると聞いたが、取組の先進性は素晴らしいと感じる。千葉県では多くの自治体で災害VCは社協に丸投げする中で災害時にも持続できる組織を目指す方向性は素晴らしいと感じた。
 
 当初予定の15:50より30分以上遅れて研修は終了し、折角なので10階建ての庁舎のうち9階にある議場を見学させてもらう。
 
 浦安市議会は人口17万人を超えているのに議員定数が木更津市より3人少ない21人である。鴨川市の議員は人口3万人を下回りながら18人の定数が妥当なのかという議論が出ていると嘆いていた。研修を終えて17時半より浦安駅近くで懇親会を行いながら各市での問題の対処方法を聞くのは色々と勉強になるし私も惜しみなく木更津市の事例を伝授する。大変有意義な時間を過ごして東西線で帰路に着き、日付の変わった巌根駅に降りて徒歩で自宅に戻り総会及び研修会を終えた。