No.69 山梨編      日本を走る ←No68南信編No70鳥海編→
旅行期間 1989年11月3日〜1989年11月5日 旅行日数:3日間
総走行距離 304km
走破市町村 6
同行者 F島 使用自転車:WR
総費用 22,174円 当時の年齢:25歳
初日 1989年11月3日
輪行区間 上田市公団上田寮→石和町石和温泉YH
走行区間 石和町石和温泉YH〜石和町石和温泉YH
走行距離 146km
走破市町村 3(牧丘,三富,道志)
累計数 2,252
 色々悩んだ結果、来年の3月末をもって公団を退職し故郷に帰って地域の役に立ちながら仕事をしようと決めた。その考えを伝えたところ引き留めの打合せなども行われ慣れ親しんだ公団を辞めていくことに強い意義を改めて感じていた。そんな志を持って帰る以上、遊びの旅などしては駄目だと思い、せめて道路公団の職員であるうちに山梨県の走破をもって最後の旅にしようと考えた。F島も最後の旅には同行させて下さい、という事になり合流場所は山中湖から道志村に入るところの山伏峠に午後1時とした。
 公団上田寮から石和温泉YHまで車で移動し走行を始める。まずは140号線を北上し三富村の境界まで走りUターンする。恵林寺で一息ついたら甲府盆地を横断して御坂トンネルへの登りに立ち向かう。
 上り坂を甘く計算したようで山伏峠に1時までに付けそうもない。河口湖からダッシュを繰り返し、タイムトライアルを行うが山中湖の平野で1時になってしまう。およそ10分遅れて峠に着けば相模湖から登ってきたF島が『山梨走破の前祝い』と言って缶ビールを沢に浸して冷やしてある。有り難く受け取り飲み干す。2時間近い立ち漕ぎでへばった身体に良く染み込む。
 山中湖から忍野村をのんびり流してアルコールを抜き、月見草の時期ではないが富士を見るために御坂峠の旧道へ登り始める。トンネルの手前で日没を待ち富士のシルエットと河口湖の夜景を楽しんだらトンネルを抜けて石和温泉に下る。
 手袋をしているのに指の感覚がおかしくなるぐらい冷える。気温が氷点下になっているところにダウンヒルで風を切ることで体感温度は-15℃位であったかも知れない。YHの味気ない風呂が本当に有り難かった。しかし昔ながらのミーティングを行うので、これではYH離れも進んでしまうだろうと違和感を覚える。
2日目 1989年11月4日
輪行区間 石和町石和温泉YH→甲府昭和IC駐車場
走行区間 甲府昭和IC料金所駐車場〜早川町山本旅館
走行距離 62km
走破市町村 2(芦安,早川)
累計数 2,254
 石和YHに車を置いたまま2日間の走行をしようと思ったが紅葉の時期で客が多くなると思われ、甲府昭和ICの公団職員用駐車場まで車を移動して走行を始めることにする。
 朝の天候は曇り。今日のメインである夜叉神峠から山が見えないと膨大な高低差を登った意味が無くなってしまう危惧を持ちながら進む。F島は厳しい高低差とダートのコースに朝から嫌悪感を持っている。しかし芦安を過ぎる頃にはすっかり晴れ、木々の紅葉が美しいため気も紛れ、急な登りも絶望することなく登れる。
 10時に登山口に到着し自転車を停めラーメンを食べ、標高差400m弱の山道を夜叉神峠目指して登山する。峠に出た瞬間に目の前に南アルプスの白鳳三山が広がる。この展望を見れたのなら苦労が報われる。
 自転車を取りに戻り南アルプスの奥深くに入り込む。広河原までは狭いが舗装された道が続き展望も良く快適に走る。崖の下を覗くとこれから進む林道が見下ろせる。午後2時に広河原で日没を迎え道もダートになる。トンネルも暗く水たまりは深く日差しもなく気温は低い。途中でパンクしたりして速度は全く上がらない。そのうちロードレーサーのサイクリストのNさんが追いつき3人で走りはじめる。彼も宿はまだ予約してないと言うので3人で泊まろうという話になる。
 奈良田で舗装路に出る頃に暗くなり始める。奈良田温泉はどの宿も満室で部屋が取れずさらに進んだ西山温泉の山本旅館に泊まる。宿泊料は7,000円と安い分だけ建物も古くなっているが、食事はボリュームがあり、風呂は提携しているとかいう話で向かいにある世界最古の宿と言われる慶雲館の豪華な大浴場に入れるのでなんだか得をしたような気になる。若干すきま風の入る部屋で3人でビールを飲みながら色々な話をして秋の夜は過ぎていく。
3日目 1989年11月5日
走行区間 早川町山本旅館〜甲府昭和IC料金所駐車場
輪行区間 甲府昭和IC料金所駐車場→上田市公団上田寮
走行距離 96km
走破市町村 1(敷島)
累計数 2,255
 朝湯に浸かってから走行を開始する。レーサーのNさんを交え先頭を交換しながら走る。そのうちF島が千切れるが早川まで気持ちよく飛ばす。Nさんは昨日の走行が主目的で今日は具体的な計画が無いというので甲府まで一緒に走ることにする。F島を待って少しだけペースを落として52号線の北上を始める。
 速度が高いために時間的余裕が出来るから寄り道を打合せると『甲州と言えばワインだろう』となり工場見学と試飲を行う。ワイン1杯を飲んで昇仙峡に向かい敷島町に入れば県別では13番目となる山梨県走破完了となる。
 昇仙峡に着くと観光客が列を成している。それを掻き分けるように進み仙娥滝を見たら御岳昇仙峡道路で和田峠を越えて甲府に出て山梨県立美術館にミレーの絵を見に行く。もちろんこちらも大勢の観光客である。そのうえ閉館まで1時間を切ったところで入ったので駆け足で見て回ることになる。
 甲府駅から輪行で帰るF島とNさんとの別れを惜しんで美術館の前の喫茶店で珈琲を飲む。駅前まで2人を見送ったら甲府昭和ICに向かい私の走行も終了となる。帰路ではワインの新酒を2本購入し、寮に帰って打ち上げを行う。
 この旅を終えて残る市町村が1,000を切り999になった。よくここまで頑張ったなと自分を褒め称え、自転車の旅を終わりにする、つもりだった。(次は鳥海編