コストコ本社移転
2021/03/15記
 コストコホールセールジャパン株式会社は12日の金曜日に本社を川崎市から木更津市に移すことを発表し、本日9時からコストコ木更津倉庫店で渡辺市長同席のもと、ケン・テリオ日本支社長による説明が行われた。私も議会として見届けたいと思い副市長や経済部長とともに参列させていただき説明を聞いた。配布資料は無かったが説明や質疑で多くのことを理解したので記載する。
 
 現在の本社がある川崎市は従業員175人を想定して確保したものだが、既に300人を越える規模となり複数の建物に分散している状況となっている。現在27店舗であるが年内には3店舗を開設予定で、その後も毎年2店舗程度を増やして将来的には全国60店舗を目指す計画の中で手狭な本社の移転を計画した。千葉県には木更津以外にも幕張と千葉NTに店舗があり市原には物流倉庫を抱えるという千葉県との親和性に加え成田や羽田へのアクセスがよい立地状況が木更津市を選んだ理由であるようだ。
 新本社は大成建設が設計施工する鉄筋コンクリート5階建てのビルで投資額は約40億円である。本年7月に着工し来年6月に使用開始予定で当初は6百人程度でスタートする。全国の店舗数が増えることに対応するためコールセンターを備えた第二本社も同じ敷地に建てることを将来構想として持っており、その際には2千人程度の雇用と想定しているので30店舗の増加に15年係るとしても令和18年頃には1400人程度の新規雇用が増えることになる。既に従業員の中には木更津移住を前提に土地購入している者もおり、新規雇用を含め住宅需要は多く発生する見込みである。さらに本社には世界中から多くのバイヤーやメーカーが訪問するので交流人口の増加によって地域への経済波及効果は一層大きくなるものと予想される。
 
 木更津市としては産業立地奨励金の制度を使い固定資産税の一部などを5年間に限りその翌年度に支給することで進出支援をすると思うが、来年6月までにマンションの供給を行い、宅地の供給を進めることも木更津市の責務のように思う。宅地供給の手段として新たに区画整理事業を始めるのでは時間が掛かりすぎるので開発行為による手法が選ばれることになるだろう。木更津駅や巌根駅の周辺に農振農用地ではないまとまった土地を確保できるか等を考えていくことで、この本社移転効果を地域に波及させるべきだと聞きながら考えていた。
 
 さて、アクアラインとアウトレットの街として有名になっている木更津市であるが、今年の夏にはドイツの世界的自動車メーカーであるポルシェが一周2.1kmの試乗コースで自動車の性能を体感する場としてのポルシェエクスペリエンスセンター東京が伊豆島に開業予定でもある。世界で9番目・日本初となる施設であり地形を活かした上り下りのある立体的構造が特色と聞く。ポルシェを購入する一部の富裕層を対象としているためか集客数は年間1万人の予定と、三井アウトレットパーク木更津の0.1%程度に過ぎないが、都市のイメージアップに繋がるものと多いに期待している。
 
 こうして来年の夏までに世界のポルシェに加え世界のコストコが木更津市に加わるわけであるが、他にも世界に誇れるような多くの施設や企業等が既に有るので、この機会に整理してみた。
 
 まずはかずさアカデミアパークの中核施設として1994年に世界初のDNA専門解析所として開設された「かずさDNA研究所」である。数多くの生物のDNA解析を世界初で成し遂げ、その成果を通じて医療や食料・環境問題に寄与している。次いで同じアカデミアパーク内で1997年2月24日に開業した「オークラアカデミアパークホテル」は世界水準の宿泊施設であり、一体となって建設された「かずさアカデミアホール」も数多くの国際会議が開催される施設で、この存在がポルシェの木更津立地を決めた大きな要員になったと聞いている。パークの中には多くの企業進出が進み、中にはサーモンの陸上養殖といった異色の企業もある。現在の課題は富士通が所有する最大敷地の利用が決まっていないものの、企業誘致に使える土地がほぼ無くなっている事である。
 
 ホテルと言えばアクアラインの着岸地で2016年5月14日に竣工披露宴が開かれた龍宮城スパホテル三日月富士見亭も木更津市を代表するホテルである。三日月グループは勝浦を本拠地としるが、2000年に金田海岸の埋立地に日帰り温泉施設「スパ三日月龍宮城」を開業し、その2年後に宿泊棟を追加。さらに富士見亭の増築で全479室のリゾートホテルが完成したことになる。三日月グループはベトナムダナン市に大型リゾート開発を行っており昨年12月23日に全天候スパ施設を開業している。全施設の開業は本年夏の予定であるが、三日月グループの縁で木更津市とダナン市が友好協定を締結し、今後の介護人材等の確保につなげていく予定である。個人的には人口減少による労働力不足を海外からの応援で確保する気が有るなら木更津市の一部に「ベトナム街」が出来ても良いと思う。
 
 アクアラインの途中の木更津人工島で日本初の洋上パーキングエリアとして1997年12月18日に供用開始した海ほたるパーキングエリアは1兆44百億円という巨費を投じたアクアラインのモニュメント的な施設でもあり木更津市で最も有名な観光地である。台風とコロナの影響がなかった平成30年度を千葉県が集計した報告書によると、観光入り込み客数が年間753万人で、県内全施設でも東京ディズニーリゾート・成田山新勝寺に次ぐ第3位の集客を誇る施設であった。因みに海ほたるの住所は木更津市中島地先であるが東京都が伊豆諸島を持つので東京湾中央部に権利を有すると横やりが入り、土地の帰属が決まらないので木更津市の面積に加えていないし正式な住所もないものだと記憶している。
 
 海ほたる以上に集客数が多そうなのは2012月4月11日に金田西地区のまちびらきと同時に竣工披露式が成され13日に171店舗でオープンした三井アウトレットパーク木更津である。2回の増設工事により今では日本初進出の世界的ブランドを含む308店舗が営業することで、店舗数としては日本一となり、三井アウトレットパークの旗艦的施設であり、三菱系のアウトレットであるプレミアムアウトレット御殿場と日本最大を競い合っている。2回目の増設後となる第3期グランドオープンの2018年10月23日の際に三井不動産は売上高550億円、来館者数1千万人を目指すと発表しているが、公式な集客数を発表していないので前述の報告書には記載がないのである。
 
 圏央道木更津東ICに隣接してDBO方式で整備され木更津市初の道の駅として2017年10月20日に開業した道の駅木更津うまくたの里は前述の報告書では平成30年度の観光入り込み客数が年間185万人で、千葉県内の道の駅で最大の集客力を誇り、全施設でも8位の集客であった。因みに袖ケ浦市の東京ドイツ村は105万人で13位、富津市のマザー牧場は81万人で20位である。単に集客が多いだけでなく運営会社の努力で運営委託料以上の施設使用料収入が入り自治体としても黒字の施設になっている。この方式の成功事例は多くの視察希望対象にも成っている。
 
 集客数を誇る施設ではないが2019年10月20日にプレオープンし翌月2日からグランドオープンしたkurkku fieldsは2003年に音楽家の坂本龍一や小林武史、櫻井和寿等によって成立されたap bnkによって運営されていた「耕す木更津農場」が発展したもので「快適で環境によい未来に向けた暮らし」を発信することで環境に敏感な人達から多くの支援を得ている。木更津市が掲げるオーガニックな都市のコンセプトを先行的に実施している点でも重要な施設である。
 
 1800mの滑走路を有する木更津飛行場に駐屯する陸上自衛隊第一ヘリコプター団は東アジア最大のヘリコプター部隊であるが、昨年7月10日より米国軍隊以外で始めてオスプレイを保有する部隊となっている。航空祭の時の集客力は凄いが、オスプレイの暫定配備によってどの程度まで増えるのか想像がつかない。他にも陸上自衛隊木更津駐屯地には対戦車ヘリコプター部隊を有する東部方面隊隷下部隊も居り、市内には海上自衛隊航空補給所・航空自衛隊木更津分屯基地が配置され、陸海空の3軍が揃う基地の街であり、古くは昭和11年に海軍航空隊が創立されて以来の軍都である。2019年9月8日の令和元年台風15号の直前に開催されたレッドブルエアレースはこの飛行場から離陸しているし、参加人数が全国有数の規模となったトライアスロン大会でも木更津飛行場は使用されている。今後はプライベートジェット等の民間機の活用が出来ないか模索中である。
 
 2002年1月18日から3月18日にかけて放送された木更津キャッツアイは視聴率は高くなかったものの根強い人気を誇り、2003年と2006年には映画化も行われた。これ以外にも多くの映画やドラマが木更津でロケを行っている状況を前提に2015年12月12日には木更津ロケーションサービスが設立された。市内各所でロケが行われるようになり、今ではドラマの一場面に木更津市内の風景が出てくることは珍しくなくなった。
 
 そんな映画の舞台として良く登場するのが歩道橋としては日本一の高さを誇る中の島大橋である。1975年に建設されたこの橋は木更津市を代表する風景の一つで、春分の日と秋分の日に橋の下にダイヤモンド富士が見られるので多くのカメラマンが集まっている。個人的には港湾を整備の際に撮影スポットを設けるべきだと思っている。因みに富士山頂と同じ緯度の線をレイラインと呼び太陽の通る神聖な道とする考え方がある。千葉県一宮の玉前神社から始まり神奈川県の寒川神社、岐阜県の恵那山・伊吹山、滋賀県の竹生島、京都府の元伊勢を通り島根県の出雲大社で日本海に沈む道沿いに木更津市の八剱八幡神社も位置している。
 
 木更津らしさを象徴する風景として日本のウユニ塩湖として有名になった江川海岸が有る。海中電柱が撤去されてしまった今でも多くの方が写真を撮りに来ている。風が静かな夕方には東京湾に写る逆さ富士も見える(写真は2019年12月21日撮影)。漁業者と調整をしたうえで海浜公園として整備しても良いと思う。
 
 他にも八剱八幡神社の西側の一角に広がる路地に広がる居酒屋群や小櫃川河口干潟・アクアライン接岸地からの風景等も木更津市でないと見られない風景だと思う。個性のある風景のある街は素晴らしいと考えているし、積極的に景観を作り発信する事は都市のイメージ向上による価値の拡大のために重要である。
 
 そもそも、昔から木更津に立地している企業にも世界を代表するものは多い。例えば元は岩根小学校南側の桜電気を母体として発展したSONY木更津はプレステーションの生産拠点であり、日本製鐵の主力製鉄所である君津製鉄所は心臓部の高炉を含め生産設備の大多数が君津市にあるものの管理部門が木更津市に移転してきているため住所は木更津市の製鉄所である。中小の企業にも注目されるような会社があり、世界と戦わなくとも地域で愛され長い歴史を持つ飲食店も数多くある街である。
 
 木更津市はこれほど多様で魅力に富んでいるので、今後とも多くの企業が進出して欲しいし、居住の場に選んで欲しいものだと思う。その為には今ある魅力に更に磨きをかける努力が必要だろうと思いながら、今回の長い記事をアップした。