登山の定義についての一考察 |
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山で出会う人と話をしていると、私は結構多くの山を登っている部類に入ってきていることに気が付く。そんなときに「これまで幾つの山に登ってきましたか」と聞かれると答えに窮する。 山の数はどう数えれば良いのだろうか・・・ 例えば筑波山に登り、双子峰の両方のピークを踏んできても男体山と女体山の2峰に登って来たと言う人は少ないだろう。しかしそれが八ヶ岳連峰で北八から入り麦草峠を越えて南八まで歩いても1峰と考えるべきかは悩ましい。まして南北アルプスは、明らかにそれぞれ特徴有るピークを一つの山として数えるべきだろう。 しかし細かいピークをどうするかという問題がある。日本第5位の高峰である槍ヶ岳3180mから日本第3位の高峰である奥穂高岳3190mまでの間には、国土地理院の1/25000地図に名前が記載されているだけでも大喰岳3101m、中岳3084m、南岳3033m、北穂高岳3106m、涸沢岳3103mという5個の3000m以上のピークがあり、そのうち南岳と涸沢岳には三角点まである。通常は大キレット以北は槍ヶ岳、以南を穂高岳として1峰と数えているようだが、例外も多く見かける。まして著名でない山はどこまで一括りとして良いか解らない。 1日に複数のピークを踏む場合は代表的な山にまとめる事を原則としているが、七面山から縦走した八紘嶺は山梨百名山では別の山に扱われていることを知り、私も別に整理するべきと考え、後から文章を区分して目次に追加したような対応も行っている。さらに1日に複数の山を独立して登るような場合(例えば市房山と大浪池)では別に処理するしかないが、時間や労力を著しく使って複数のピークを越えた山でも単独に扱った例(例えば庚申山を越えて到達した皇海山)は幾らでもある。 標高の問題も有る。千葉県の山のように最高でも400mしか無い山では充分な登山とは言えないが、それでも鋸山のように結構登山の雰囲気を味わうことが出来るし、道を誤り何時間も歩き、危うく遭難しそうにもなった山もある。それらを登山行為では無いと言うのは忍びないが大多数を載せない。ぐんま百名山では500m未満の山を7峰ほど選択し、そのうちで桐生近郊の3峰は明らかに何回か登っている山であるが名山として登山記録を残す気にならない。離島の登山でも、例えば神津島の天上山は登山と思っているが、青ヶ島の大凸部は登山として扱っていないなど標高500mを目安に区分している。 逆に標高が高くても、例えば茨城県最高峰の八溝山(1022m)のように頂上まで自転車で行けたら、それは登山でなくサイクリングであるし、志賀の横手山(2,307m)のようにスキー場のリフトで山頂に立つ山は登山でなくゲレンデスキーである。しかしツアースキーとして2日間も雪山の中を苦労していれば、それは立派な登山行為だろうと考え、志賀草津を追加した。同じように雪中行軍が厳しかったので三斗小屋も追加した。 同様に、独立峰の資格を兼ね備えている入笠山(1,955m)や高ボッチ(1,665m)などであるが、車を停めてから往復30分程度で済ませる登山は記録に留めるに値しないと考え記録は残していない。 それでも日本200名山は例外として扱い、伊吹山のように標高の殆どを車で稼ぎ、わずか120mを登っても登山と数えたり、ロープウェイ駅から僅かの御在所を登山としていたりする。ルールには節操がないである。 さらに山頂の定義も難しい。三角点が最高所でなかったり、乾徳山のように尾根の途中のピークが山頂だと定義されているものも有る。さらに山頂まで至れなかった登山行為もある。上高地から槍山荘まで1550mもの標高差を登っても山頂を踏まない限り山に行ったことにならないというのは納得できない。同様なケースが北海道の幌尻山荘や南アルプス前峰の入笠山手前の御所平だ。先ほど入笠山は登山に入れないと言いながら矛盾しているようだが、このケースでは麓から歩いて標高を稼いだので登山行為なのである。これを富士見パノラマスキー場のリフトで行ってしまったら登山でなくなると言う、整理が難しい問題も有る。 子供が産まれてからは一緒に登った山を記録に残してあげようと思い、駅からマザー牧場までのハイキングである鹿野山や過去に数回した登山を記録していない富山なども記録に留め始めたので、時間と供に質的な変化が生じていることも否めない。 結局、日本百名山や二百名山と定義されているものについては幾つ登ったと数えることだけは出来るが、山を数える事は意味がないだろうと言う結論に至った。だから頁毎にはナンバーを付けているが、必要に応じて後からでも追加する考えなので、山には番号を入れていないのである。 だから今までに登った山の数は解りませんと答えるしかないのである。 |
2008年11年12日記載、2019年06月07日加筆修正 |
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